超個人的新着RSSリーダー

  • JavaScriptをONにすると、RSSリーダーが表示されます。


     

記事一覧

うたいしこと。(28) :第3章-5

 ・プロローグはこちら

 ・第1章-1話はこちら

 ・第2章-1話はこちら

 ・第3章-1話はこちら


 続き
 


■第3章:ちょっとだけファンタジー ―― 第5話




「ん? どうした陣内、何をそんなに驚いている」

「あ、いや、なんでもないです……で、でもどうするんですか部長。購買とか工場とかに直接交渉しに行くんですか?」

 怪訝な顔で振り向いたあずさに、拓実は取り繕いつつも正直に尋ねた。

「さすがに我々にもできる事とできない事がある。これほど熱心な彼が何度も要望を出しても変わらなかったのなら、我々が行っても大差ないだろうし、無駄に時間を食う可能性大だな」

「だったらどうやって……」

 あっさりと切り捨てたあずさに、拓実はなおも困惑の表情。
 そんな後輩に、ふふっと不敵に微笑んで、あずさは三宅へと向き直ると、

「三宅君といったな。我々は必ずしも、依頼主が望むそのままの形で問題を解決するとは限らない。全く別のアプローチから物事に当たるケースも多い」

 少し厳粛な雰囲気をその身に漂わせて、言い含めるように。

「だがいずれにしても、依頼主本人の真摯で率直な姿勢がなければ、どんなに我々が手を尽くそうと何一つ解決できんのだ。それを踏まえた上で、君の求める喜びを君自身で確かなものにしてもらうため、これから我々のする事に素直に従ってくれる心積もりはあるか?」

「は……はいっス! 美味しいやきそばパンが手に入るなら、自分、何でも協力するっス!」

 三宅は拳を握って断言した。覚悟というか、やきそばパンに対する情熱はやはり半端ではないらしい。

「ふむ……わかった。三宅君、今日これから時間は充分に空いているかな?」

 そんな彼に一つ頷き、あずさは意味ありげに尋ねた。三宅はきょとんとしつつも首肯。

「え? まあ、問題ないっス」

「よし、では少しここで待っていてくれたまえ。藤原、すまんがちょっとついて来てくれ。すぐに済む」

「はい、先輩」

 今まで何やら半田ゴテ片手に机で黙々と作業していた進一は、短く応えると手を止めて席を立ち、あずさに従い部室を出て行った。
 何する気だろう、と、残された拓実達は顔を見合わせ、しかし大人しく待つ。

 十分少々で、あずさと進一は帰ってきた。

「よし、段取りは整った」

 開口一番、あずさは一同の顔を見渡すと、

「上手くすれば今日下校するまでに、この問題は解決する。ついて来たまえ」

 彼女らしい、自信ありげな笑みを浮かべた。



    ***



「あーら後輩ク~ン、よく来てくれたわー。嬉しいわー」

 拓実の顔を見るや否や、料理部の部長さんはほっこりした笑みを浮かべて歓迎した。
 妙な迫力にたじろぎながら、拓実はどうにか引きつりかけの笑いを作った。

 ここは調理実習室。
 進一を除いたうたいしえあ部の面々は、三宅を伴って料理部にお邪魔していた。
 ちなみに、進一は預かり物の修理があるので部室でお留守番。年配の英語教師が授業でのヒアリングに愛用しているレトロなラジカセらしかった。

 なんでも、この部長さんは好みの年下男子が近くにいるだけで上機嫌になるらしい。
 要するに、先程あずさが進一を同行させたのは、交渉を有利に進めるためのイケメン起用……とのこと。

「すまない、恩に着る」

「いいのよあずさっちー。藤原くんにだっていつも助けてもらってるし、このくらいお安いご用よ~」

 堅苦しく礼をするあずさ(素なのだろうが)に、部長さんは朗らかに笑って返した。

「それにたまにはこんなジャンクフードも面白いじゃなーい? がんばりましょー」

「じゃんくふーど? がんばる? ……ってあの、部長、これから何するんですかっ?」

 料理部長の大らかな台詞を怪訝に感じたゆいが、あずさに後ろからおずおずと問いかけた。
 振り向いたあずさは、あっさり、平然と。

「うむ。これより我々は、やきそばパン作りに挑戦する」



 ...To be Continued...

 →■Click to Go to Next.

 

  • この記事のURL
  • コメント(1)

  •  
                       

コメント一覧

ponsun URL 2011年12月04日(Sun)07時48分 編集・削除

あずささんの戦術が

見事に功を奏するのでしょうか


ありがとうございます