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 ・『ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(水野南北物語)』
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ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(13)

 たいへんおまたせしもうした。
 ひとまずごたくはさておき、前回の続き。



 薬種商の若旦那・喜兵衛を弟子に迎えた南北くん。
 八助と共に喜兵衛の別宅に移り住んでから、しばらくたったある日の事。


 悪相不健康からすっかり快復した喜兵衛(◎∀◎-)は、家族や従業員を連れて花見に出かけていました。

 咲き誇る桜の下で宴会モード。
 喜兵衛のまだ幼い子供も大はしゃぎ。桜吹雪の中をあちこち駆け回ります。

 ……他所様の宴会テリトリーにも疾風怒濤で容赦なくブレイクスルーしまくるほどに。

 喜兵衛はたまらず追っかけて、首根っこを捕まえました。


(◎∀◎-)「こら、あかんやないか。ほかの花見客に迷惑かかっとるやろ?」

(;>o<)「やだやだやだー! はーなーしーてー! うびぇぇぇぇーん!」

(◎∀◎-)「あかん、どないしよ。手ぇつけられへん……」


 花見の解放感にあてられ高揚しているのか、いくらなだめても落ち着きません。
 困り果てていたその時でした。


(=゚л゚)「む、これは元気のよろしい童だな」


 通りがかった従者連れの侍が、親子の前で足を止めました。
 物腰も身なりも、見るからに立派な感じのその侍は、子供好きなのか、じたばたする子を見て鷹揚に笑うと、懐から何やら取り出しました。


(=゚л゚)「はっはっは、よし、拙者はちょうどそこの福引出店で当たったニンテンドー3DSiを持っておる。これを童にあげようではないか」

(*>o<)「わーい、おさむらいさんありがとーっ!」

(◎∀◎-)「なっ、そないなもんホンマによろしいんでっか!? ……つーか、あないな屋台クジのそないな高級品て、単なる客引きで絶対当たらへんと思っとったですがな」

(=゚л゚)「はっはっは、戯れに引いてみたのであるが、当たったものは仕方あるまい。それに拙者が持っておっても無用の長物。こうして童の手に渡るべくして訪れた、天の采配やもしれぬ。お気にめされるな」

(◎∀◎-)「それは……ほんまおおきに。せやかてこのまま何のお礼もせえへんかったら、この小西喜兵衛の名折れでおま。せめて一献、よければとことん桜の宴を共にしてはもらえまへんやろか?」


 こうして半ば強引に喜兵衛は、片利先兵衛(かたり・さきべえ)と名乗ったこの侍を花見酒宴に招き、盛大にもてなしました。



 数日後。
 喜兵衛の店を、先兵衛が従者を連れて訪ねてきました。

 先日のもてなしのお礼にと、手には見事な酒肴と菓子折り。
 喜んだ喜兵衛は、先兵衛を奥座敷に招き入れ、先日同様心からもてなしの酒宴を開きました。


 が、その最中。

 主人が宴会に興じる間、店の前で待機していた従者を見つけた、ある男。(´・ω・)
 先兵衛が喜兵衛の屋敷にいると知り、店番に話を通して、奥座敷までやってきたのです。


(´・ω・)「あのう、片利様。先日片利様のご主君がご所望とのことで、この古天明平蜘蛛茶釜、三百両の手付金として、百両賜りましたが……」

(=゚л゚)「うむ、確かに百両は払ったが、なんだ言い難そうに。構わぬから早く申せ」

(´・ω・)「はい。それが……業突張りな当店の主人が、他に四百両出してくれる買い手が見つかったから、今日中にお侍様から残り二百両を頂けないのなら、手付金を返してこい、などと言い出しやがりまして……」


 恐々と告げる男の手元には、件の茶釜と百両包み。
 残金を払って茶器を受け取るか、百両を取って商談を破棄するか、という選択肢の表れです。

 しかし、あまりに図々しい申し出に、当然ながら呆れる一同。


(=゚л゚)「……では、今この場でそれがしが百両出そう。残り百両は明日中に用立てる。それで手を打たぬか」

(´・ω・)「個人的にはそうしたいのはやまやまなのですが……ギネス級にドケチアンド強欲で人として最低な当店の主人はそれを許さないでしょう。でなければ、こうして私を使いを出したりはしませんですハイ……」

(=゚л゚)「ぬぅぅぅ……おのれあの鬼畜外道の餓鬼商人め! 一度金額を取り決め手付金まで受け取っておきながら、なんという不埒千万! 我が主君の面目も丸つぶれではないか! 今すぐにでも駆けつけ刀のサビにしてくれるわ!」


 怒りのあまり刀を手に飛び出そうとした先兵衛を、喜兵衛は必死で押し留めました。


(◎∀◎-)「ちょ、ちょいとお待ちなはれ! ほならわてが今その残り百両用立てますさかい!」

(=゚л゚)「いやしかし小西殿、そういうわけには参りませぬ」

(◎∀◎-)「いくらご主君はんのため言いなはっても、怒りにかられて刃傷沙汰は良くありまへんがな! それこそ主の名を汚すとは思いまへんかいな!?」

(=゚л゚)「む、むぅ……」


 喜兵衛の真摯な説得の甲斐あって、先兵衛はどうにか落ち着きを取り戻しました。
 そして渋々ながらも申し出を受け入れ、喜兵衛の提供分と合せた二百両を(´・ω・)に支払い、無事その場で件の茶器を手に入れたのです。


(´・ω・)「まいどー。では私は宴会の邪魔なので速やかに主人の元に帰ります。ホントすみません」

(=゚л゚)「うむ。くれぐれもよろしく伝えてくれ。次このようなことがあれば叩っ斬るとな」

(´・ω・)「はい。あの下衆の頂点に君臨する当店の主人にはそれはもうきっちりばっちり身体に教え込ませるように伝えておきます。それでは……(ささっと退場)」

(◎∀◎-)「……どんな店内関係なんでおまっしゃろかなぁ……」

(=゚л゚)「しかし喜兵衛殿、かたじけない。早速百両借り受けの証文をしたためねば」

(◎∀◎-)「あー、それにはおよびまへん」

(=゚л゚)「む? なにゆえにそのような」

(◎∀◎-)「ご主君の名誉を守らんとする片利様の心意気、この小西喜兵衛えらい感服でおます。そんな忠義のお武家はんから証文いただくやなんて、武士道ならぬ商人道に背きまんがな。せやから必要おまへんっ」

(=゚л゚)「む、むぅ……何から何まで、本当にかたじけない。だがそれではさすがにそれがしの面目も立たん。せめて証文代わりに、用立て分の百両を持参するまで、この平蜘蛛茶釜を預かってはもらえぬか。拙者のような粗忽者の手にあるより、一流の商人である喜兵衛殿の手元にある方が、むしろ安心できるゆえ」

(◎∀◎-)「……まあそこまでおっしゃるなら、そうしまひょか。責任もって大切に保管させていただきますわ」

(=゚л゚)「何から何まで、本当にかたじけない。この恩、決して忘れはせぬぞ」

(◎∀◎-)「まあまあ、これ以上かたい事は言いっこなしでんがな~、ささ、飲みなおしといきましょか~」


 こうして、酔いどれ喜兵衛と先兵衛は気分も上々、杯を酌み交わしました。


 やがて宴が終わり、店を後にした先兵衛と入れ替わるように、南北くんと八助が喜兵衛を訪ねてきました。


(◎∀◎-)「やー先生に八助はん、本日はお日柄もよくー」

(  ̄д ̄)「いきなり何スピーチ始めてんのさ? 喜兵衛さん、酔ってるね。ところでさっき店から出てった侍は?」

(◎∀◎-)「それがでんな、実はかくかくしかじかで、さっきまで宴会しとりまして」


 上機嫌の喜兵衛。
 しかし南北くん、先兵衛とすれ違ったときに見た「相」に、何かを感じ取っていました。


(  ̄д ̄)「そっか……でも百両なんて大金、酒のせいかもしんないけど、早まったかもしれないよ?」

(◎∀◎-)「わはっはー、いくら先生の仰ることでも、そんなはずありまへんがな。片利様は忠義溢れた武士の鑑、こうして担保代わりに、このご主君のための古天明平蜘蛛とかいう茶釜をワイに預けてくだはったくらいで――」

(=_=`)「古天明平蜘蛛……? そんなはずはないでござる」

(  ̄д ̄)(-◎∀◎)「??」

(=_=`)「かの茶器は、戦国時代に乱世の梟雄と呼ばれた松永久秀が愛蔵した名器でござるが、久秀が織田信長に攻められ自害した際、共に爆散したと伝わってござる」

(◎∀◎-)「は……? ほ、ほならつまり……」

(  ̄д ̄)「つまり、現存してるはずがない、ってことか?」

(=_=`)「左様でござる。現存しているはずはござらぬし、もししていても、かような経緯から三四百両程度の値で済むとは到底思えない超レアアイテムでござる」


 普段寡黙な八助の、博学なツッコミに血の気の引いた喜兵衛。
 一気に酔いはさめ、急いで鑑定家に見てもらいました。


 ……鑑定の結果。


(゚┏ω┓゚ )「いい仕事してますねぇ~、なーんて言う訳ないじゃろこんなガラクタに」


、二百両どころか、ダ●ソーでも買えそうな二束三文の安茶釜。

 そう、贋物だったのです。


 つづく。



 次回、ナンボククエスト第十四話、
「喜兵衛絶体絶命(中略)後編」をお楽しみに。
 嘘でもなんでもなく長いから前後編になっちった。







(  ̄д ̄)「ってかなんで師匠が鑑定してんのさ」

(゚┏ω┓゚ )「たまには出番くらいあってもええじゃろが」

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ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(12)

 えーっとお知らせ。
 前回までこの「ストーリー・オブ(以下略」は《考え事→飲食》カテゴリに入れてましたが、
 新たに《物語→水野南北》カテゴリを作って、過去記事も含めて全部そちらに移動させました。

 なので以前の話には「物語」としちゃ余計な能書きが入ってたりもしますが、
 そーゆー経緯なんで、特に新たに読み進めて頂いた方はご容赦くださいませ。m(_ _)m


 んじゃ前回の続き。




 初めての弟子・紀州浪人の八助を迎えた南北くん。

 その八助、温和な割に案外果断な行動派で。


(=_=`)「師匠、只今帰りましたでござる」

(  ̄д ̄)「おうお帰……って八助、何だその本の束は。それに刀差してないじゃん、どーしたんだよ?」

(=_=`)「拙者、師匠の弟子になりもうした。ゆえに、一日も早く師匠の教えについてゆけるよう、まずは古今東西の観相書を読破しようかと」


 弟子入りの翌日には大小の刀を売り払い、
『柳庄相法』『麻衣相法』『陳搏相法』『神相全編』『月波洞中経』『非相篇』などなど、
 古本屋で観相学の本を買い漁ってくると、南北くんの前に座って音読を始めました。

 海常師匠の教示を受けて後、実学一辺倒だった南北くんも、
 思いがけず弟子の口から流れ出す新鮮な知識に、一緒に座り込んで耳を傾けました。


(  ̄д ̄)「(人に教えることとは自分が教わることだ、ってよく聞くけど……師匠もこんな風に俺から学んでたのかなぁ)」


 普段物静かな割に、ハッキリと芯のある八助の朗読を聞いていると、
 海常師匠に初めて教えを受けた時の事がしみじみと思い出されます。


(  ̄д ̄)「(つっても、これじゃどっちが師匠かわかんねぇなぁ。ま、いいけど)……って八助、今の『五常』ってのは何だ?」

(=_=`)「五常と申しますは、儒教における仁・義・礼・智・信の五つの人徳のことで――」


 何はともあれ。
 師匠と呼ばれるようになっても、南北くんの学究心は衰えを知りませんでした。



 さて。八助が弟子となってしばらく後。
 南北くんはさらに、もう一つの重要な出会いを果たします。

 それは、以前の働き場で贔屓にしてくれたVIPの頼みで、ある人物の観相へと出向いた時のこと。

 行き先は、現代でも薬の町として知られる大阪・道修町。
 観相相手の名は、薬種商の若旦那こと三代目小西喜兵衛。

 依頼してきたVIPの話では、この喜兵衛という男、とにかく病身病弱な上に不運続き。
 あちこちの易者に観てもらったものの、『この相では三十歳まで生きられないだろう』と口を揃えたように判定される始末。

 おかげで、ただでさえ貧相虚弱な喜兵衛は、余計陰気に落ち込んでいく一方。
 それを見かねた依頼人が、藁にもすがる想いで南北くんを頼ったのでした。


(  ̄д ̄)「なんとか縁起直しできないものか、って頼まれりゃ、まぁひとつやってみるしかないわなぁ……ごめんくださーい」

(●A●-)「本日はぁ……わてのためにぃ、わざわざお越しいただきぃ……ほんまおおきに……」

Σ(; ̄д ̄)「うわっ! めっちゃ暗っ!?」


 初めて目にした喜兵衛には、凶相も凶相、短命貧窮の悪相がこれでもかと出ていました。

 しかし今回の依頼内容は、単なる観相だけではありません。
 この『悪相』を、いったいどうやって『好相』へと押し上げるか。

 模索の中で思い出したのは……他でもありません。
 南北くん自身がかつて経験した『凶相からの脱却』と『現在にまで至る、向上と理解』、そのプロセスでした。

 この日から、南北くんは喜兵衛の相を改善するため、頻繁に道修町へと通いつめます。

 相の改善、ひいては運勢・運命・そして生命力の改善。
 それらを成功させるべく、まず「相とは何か」、「相は何によって定まるか」、
 そして「相を変えるにはどうすればよいか」……八助も交えて、喜兵衛の屋敷で根気よく講義を行いました。


(  ̄д ̄)「相って字は木目って書くだろ。木目ってつまり、年輪のことじゃん」

(=_=`)(●A●-)「「おお、確かに」」

(  ̄д ̄)「顔の、人相ってのも同じなんだよ。
 例えば、目は心の窓でさ。顔の相の六割は目の光で決まるんだ。日頃暗い事を考えてれば光は暗く淀むし、善い活力に満ちてれば澄んで力強く輝く。
 荒んだヤクザ生活してる奴の血走った目や、いつも愚痴や泣き言こぼして取り越し苦労ばっかりしてる奴の恨むような目は、その心の暗さが目の色にこびりついてできた相なんだ」

(=_=`)(●A●-)「「ふむふむ」」

(  ̄д ̄)「口も同じだよ。口ってのは言葉、つまり意思を発する場所だ。
 悪口や不平不満ばっか言ってると、口の端がへの字になる。何度も繰り返せば、その動きがこびりついて、口の形そのものが歪んでくる。悪い相が積もって刻まれていくんだ。
 喜兵衛さん、あんたのアルファベットな形の口も同じさ。心当たりあるだろ?」

(●A●-)「はぅ……確かに、そないやったかもしれまへん……」

(  ̄д ̄)「イエスキリストだって、はじめに言葉ありきって言ってるじゃん。それに言葉は考えや思いがあってこそ生まれるし、行動も同じだ。外面に現れるかどうかは一切関係なく、どんな些細な要素でも全部重要で、つまり全部『相』になるんだ」

(=_=`)「なんと……相とは、それほど根深いものでござったのか」

(  ̄д ̄)「つまり『相』ってのは全部、自分で蒔いた種から出たものだ。
 考えたこと、思ったこと、口に出したこと、行動したこと……塵も積もれば山となるって言うけどさ、その全部が本当にもれなく積み重なって、年輪のように層となって、その人の人相が固まる。他の相も同様にでき上がるんだ。
 例外はないよ、本人がそれを意識していようといまいとね。天網恢々疎にして漏らさずってのは、ある意味そういうことでもあるんだよ」

(●A●-)「あ……つまり、意識してへんっちゅうのが……疎、天網の目が粗いってことでおますか……」

(  ̄д ̄)「おうよ。自分は不幸だ不幸だって嘆いてる奴を見てみなよ。例外なく自分が自分の運命を、相を創ってるって意識がまるで皆無だろ」

(=_=`)「……言われてみればまこと、そのようでござる」

(  ̄д ̄)「いいか。本当の相ってのはね、外側じゃない、内側にあるんだ。
 というか本来、肉体に相はないんだ。
 生まれつきの悪相なんてのは無くて、それは全部、いわゆる自我から生み出されて、つまり自我が目に見える『相』という姿形をとって、外側ににじみ出てきただけなんだよ。
 と、いうことは……だ。八助、喜兵衛さん、どういうことかわかるかい?」

(=_=`)(●A●-)「「?」」

(  ̄д ̄)「俺は何のためにここに来たんだい?」

(=_=`)「それは、喜兵衛氏の運命を好転させるため、でござるな」

(  ̄д ̄)「そうだ八助。そして今言ったとおり、悪相も良相も生まれつきじゃない、後天的なものだ。つまり……」

(●A●-)「あっ……ほなら、わての三十歳まで生きられんっちゅう運命も……?」

(  ̄д ̄)「おうよ、喜兵衛さんにその気があれば、変わるぜ。相は、運命は心持ち一つで変え得るんだ!」

(●A●-)「! せ、先生ぇぇ……」

(  ̄д ̄)「感激で涙ぐんでるとこ悪いが、泣くのはまだ早いぜ。
 これから基本方針として、俺の監督下で日頃の行いの見直しと矯正を試みる。で、それを通じて喜兵衛さんの『内側』を変える。そうすれば相も運命も、勝手に変わってくる。俺はそれを身をもって経験してきたからね」

(●A●-)「ハイ先生! わてはいくらでも、先生の教えに従いますさかい……なにとぞ、なにとぞぉ……」

(  ̄д ̄)「俺の袖で鼻水拭くな。んじゃまずは日々の食事、献立から変えていこうじゃないか」

(=_=`)「食事、でござるか? 師匠、それはなにゆえでござる?」

(  ̄д ̄)「さっき、心の姿勢も含めた全部が『相』という年輪として積み重なって現れる、って言ったよな。
 逆に言えば、そんな年輪が生じるからこそ観相ってのは成り立つんだ。
 ただ、従来の観相学ってのはそこで終わってた。満足して追究を怠ってたんだ。あんたは運がいい、運が悪い、それだけ判定してハイ終わり、ってね」

(●A●-)「ああ……今まで見てもろた易者はん達も、言われてみればそうでおましたなぁ……」

(  ̄д ̄)「俺はこれまで、千人万人の観相を通じて、実学で学ばせてもらってきた。いわば、千人万人がもれなく恩人なんだ。
 なのに、そんな恩人に対して、ただ相を見て『あんたは運がいい、運が悪い』ってだけで済ませてんじゃ、相手のためになりゃしない。恩返しにならないんだ。
 運が良いならそれを保ち更に押し上げるには、悪いなら悪いなりに好転させるにはどうしたらいいか、そこまで的確に処方箋を出せてこそ、つまり一人一人それぞれが本当に幸せを噛み締めてくれてこそ、ようやく俺も恩を返せたことになるんだ。
 そのためには、不幸な人間が不幸になるべくしてなった、その根本的な共通点を洗い出す必要があった。不幸の原因を取り除けば、あとは幸せになる道しか残らないからな。火葬場にまでもぐりこんだのには、そんな理由もあるんだよ」

(●A●-)「ひそひそ(八助はん……あんさん、ええ師匠に恵まれはったなぁ……)」

(=_=`)「ひそひそ(誠に、我が事ながら同感でござる)」

(  ̄д ̄)「っと悪い、話が逸れたよな。
 たとえば熟練した庭師は、庭木の葉っぱ一枚見ただけで、その木の健康状態や、庭土の質まで見通しちまう。
 それと同じだよ。相は葉っぱ、考えや心は幹だ。いくら葉っぱをいじったところで幹の病は良くなりゃしないけど、逆に幹が健やかなら自然と葉っぱも変わり、緑濃く生い茂る。つまり運も栄える。
 でも、それだけじゃない。今の喩えで、何か抜けてるところに気付かないかい?」

(=_=`)「抜けた所、でござるか……? 葉っぱが『相』で、幹が『心』……」

(●A●-)「あ。先生、『庭土』にあたるものがおまへんな」

(  ̄д ̄)「そうだ。葉と幹、つまり木を俺たち人間とすればさ、庭土はその人間の生命を根本的に支えるものだ。
 あ、人間の生命つっても、単に肉体の生命ってことじゃないよ。
 それだけじゃなく、心も精神も、全部ひっくるめた『にんげん』を構成する全て、ってことさ。
 で、俺たちってのは要するに、飲み食いした物でできてるだろ」

(=_=`)(●A●-)「「あ!」」

(  ̄д ̄)「オーケー、その顔は気付いたな。
 そう、人倫の大本は『食』だ。
 運命って字は命を運ぶって書くけど、そのためには食わなきゃいけない。
 でもその食う物ってのも、やっぱり命だ。
 食った命にまた命を運んでもらってるんだ。それこそ恩人みたいなもんだ。
 そんな命の扱いがぞんざいなら、つまり食い方が悪ければ……具体的には美食や贅沢、暴飲暴食なんかを繰り返してれば、運ばれてくる命の方が愛想を尽かす。つまり運命が悪くなるんだ。
 実際、火葬場で見た陰惨な人生を遂げたやつの内臓ほど、いったいどんな悪食だったか知らないが、青黒くて病気そのものみたいな色してやがった。それにこれは一つの例なんだけど、昔の俺はさ――」


 そうして、南北くんが続けてしみじみと語った過去――海常師匠に死相を指摘され、必死の思いで麦と豆のみの慎食行に挑み、そして剣難から脱したばかりか観相という道を見つけた実話に、喜兵衛は大いに感激した様子で、


(●A●-)「そないなことが……ほなら先生は今も?」

(  ̄д ̄)「おう、麦飯は一日一合半、酒は好きだけど一日一合以内を続けてる」


 かくして彼、三代目小西喜兵衛。
 南北くんの指導の下、慎食と日々の心構えの改善に挑み……やがて。


(◎∀◎-)テカテカ

(; ̄д ̄)「……呆れるくらい見違えたなおい。口がターンエー化してやがる」

(◎∀◎-)「いやぁ、それもこれもみんな先生のおかげでおま!」


 あれだけハッキリ出ていた喜兵衛の悪相はまるでナリを潜め、
 それどころか、明るくイキイキはつらつとした、いかにも大店の若旦那にふさわしい覇気を発揮するまでになりました。

 実際にコーチを務めた南北くんにとっても驚きの運命向上っぷりでしたが、
 何より誰より、一番心躍っていたのは、他ならぬ喜兵衛本人でした。 
 感謝の念もあらわに、喜兵衛は南北くんへと、こんな事を申し出たのです。


(◎∀◎-)「つきましては先生、わても八助はんと同じゅう、先生の門弟にしてもらえまへんやろか? そしたら、この近くにわての別邸がありますさかい、遠慮なく自由に使ってもろて構いまへん。そこに八助はんも一緒に住まってもらえまへんやろか?」

(  ̄д ̄)「ん? まあ、それは問題ないし非常にありがたいんだけど、何でまたいきなり?」

(◎∀◎-)「わての先生を千日焼き場にずっと篭らせとくわけにもあきまへん。それに先生はほんまに大したお方や。そんな先生の教えを、わてと八助はんの二人占めやなんて社会の大損失でんがな。ここはひとつ、わてが宣伝部長として駆け回りますさかい、ウチを拠点にもっとお弟子はんを集めまひょ!」

(; ̄д ̄)「あ、ああ……つーか元気になりすぎだろ。嬉しいけどさ」

(=_=`)「しかし、ついに先生もお屋敷住まいでござるか。ツチノコでも捕まえて一攫千金を果たしたみたいなものでござるな」

(◎∀◎-)「ほならわてはツチノ小西喜兵衛かいな! こりゃ八助はん、うまい事言いよりますなぁ!」

(  ̄д ̄)「うまいか? それ……」


 こうして、地元でも有力な商家である喜兵衛の強力な援助を得て、
 南北くんは本格的に観相家としての大きな一歩を踏み出そうとしていました。

 ……が、その矢先。

 ある悪質な事件が、彼ら南北一門に降りかかってきたのです。

 その事件とは……次きの講釈にて。


 次回、ナンボククエスト第十三話、
「喜兵衛絶体絶命! 南北一座、一世一代の大芝居!?」
 をお楽しみに。嘘ですは嘘です。

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ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(11)

 えっと長らく更新が開いちゃってすみません。無事生存してます。
 ちと内的な意味で大きな変化、あるいは示唆がありまして、実はまだ現在進行形でそのウェーブとやりあっとります。
 正直かなり混乱気味ではあるんですが、それなりに落ち着いてもきたのでお待たせしすぎな南北くんの続きやります。日本語あやしいなおい。

 では、どうぞ。


 ~~~


 前回の続き。


 髪結い床で得たのは、顔や毛に関する観相。
 風呂場で得たのは、体格や様々な体の部位について。

 それらは全て、身体の表面に位置するものばかり。


 しかし、人体とは。
 相を持つ人体というものは、表面だけではないはずだ。


 人体の内側にある相を見定めるべく、いよいよ南北くんは、
 焼き場人足――つまり火葬場での労働に就く決心をしました。


 天明六年(1786年)。
 水野南北、三十歳。

 三年勤めた松の湯に暇を出したその足で、
 摂津西成郡難波村(現在の大阪市浪速区)の千日墓所という所へ向かいました。


 この焼き場人足という職、あるいはそれを統括する胴元の人々は、いわゆる葬儀屋の役割も兼ねていました。
 現代でも不況知らずなどと呼ばれもする業界ですが、この時代のそれは利権も相当のもの。
 元締めクラスともなると小大名すら凌ぐ豪奢な生活を送れるほどだったとか。

 だから、下っ端人足であってもおいそれと雇ってもらえるわけではないのが常。

 ……なのですが、そこは南北くん。
 サロン・ド・鬼や松の湯、そして観相の腕で培ったVIP人脈を駆使して、とらば~ゆに難なく成功しちゃいます。


(  ̄д ̄)「ほんっと、持つべきものは、人脈だね。ありがたやありがたや」


 さて。
 この千日墓所には、その名のとおり墓地としてのほか、二つの顔がありました。

 一つは、焼き場、火葬場として。

 もう一つは……処刑場として。


 つまり、ここに集う「ホトケさん」は、安らかな最期を迎えた人ばかりではありません。

 血なまぐさい人生の末に壮絶な最期を遂げた人。
 騙し騙され世を恨んで逝った人。
 大罪によって処刑された人。
 また、社会的な法を犯したわけではないが、無惨な事件や事故に巻き込まれた人も。

 そのような、いわゆる「不遇」な人々の「死の表情」を無数に目の当たりにしていきます。
 それは一切の例外なく、「相を止めた人々」あるいは「~だったもの」の姿。

 更に葬儀では参列者の間を駆け回り、死者の来歴を巧みに聞き出し、遺体の持つ情報との比較照合を怠りません。
 そうやって、焼き場人足としての働きの中、南北くんは浮世の巷では得難い貴重なデータを着実に集めていきました。


 そんな、ある日の事。


(  ̄д ̄)「……ん? あいつはまさか……」


 一仕事終えて墓所内の住家へと歩いていた南北くんの前方から、二人の男が歩いてきました。
 しかもその内の一人、チンピラ風体の人物に、何となく見覚えがありました。


(  ̄д ̄)「もしかして権(ごん)か?」

(`д´メ)「!? ワシの名ぁ知っとるおんどれぁ、何もんじゃ!」

(  ̄д ̄)「待て待て、匕首抜こうとすんな。俺だよ俺、鍵屋の熊太」

(`д´メ)「……ああっ! 熊太の兄貴で! 生きとったんで!?」

(  ̄д ̄)「おうよ、そう簡単にくたばってたまるか」


 この権という男。
 かつて鍵屋熊太としてチンピラ稼業に携わっていた頃の、いわゆる舎弟でした。
 その立居振舞いから察するに、どうやら今も極道の世界にどっぷり浸かっている様子。


(  ̄д ̄)「ところで権よ、隣の侍さんは?」

(`д´メ)「いやなに、いわゆる用心棒でさあ。といっても腕も威勢もからっきしなんすけどね、ご覧の通りガタイだけはいいんで。連れてるだけで番犬代わり程度にはなるってぇもんで」

(=_=`)「……(ぺこり)」


 そう言われ、静かに会釈した隣の浪人を改めて観察した南北くん。
 確かに、体格は立派ですが、眼光に任侠者特有の狂犬めいた鋭さがありません。
 むしろ雇い主からの侮言にも気を損ねない、温和で実直な気性が窺えるほど。
 人間としては好感が持てそうですが、しかしなるほど、用心棒としては張子の虎のようです。

 そんな観相モードのまま、視線を侍から権へと戻した南北くんでしたが、
 その時、昔馴染みの顔面に、ある『相』を発見してしまいました。

 海常師匠と初めて出会ったとき、彼の顔にあったのと全く同じ――剣難の大凶相を。


(  ̄д ̄)「……権、気をつけろよ」

(`д´メ)「……はぁ? 何でぇいきなり」

(  ̄д ̄)「お前に剣難の死相が出てる」

(`д´メ)「んだとワレェ! 何縁起でもねえことぬかしよんねん! 昔のよしみで下手に出てりゃつけ上がりやがって!」

(  ̄д ̄)「よしみってのはこっちの台詞だよ。しばらくは大人しくしとくのを勧める。でないと本当に死ぬぞ」

(`д´メ)「ケッ! 薄汚ねぇ坊主の戯言に付き合ってられるかってんでぇ! 胸クソ悪ぃ、さっさと帰ぇるぞ八助!」

(=_=`)「……(こくり)」


 八助と呼ばれた武士は、やはり物静かな物腰で軽く頷くと、憤懣やるかたない権の後について立ち去っていきました。

 目を細め、その二つの背を見送りながら南北くんは呟きました。


(  ̄д ̄)「……昔の俺と同じ、愚か者だな」



 ……。

 数日後。

 墓所内を歩いていた南北くんの前方からやってきたのは、体格のいい一人の浪人。
 大人一人は充分入るサイズの桶樽を背負った男は、すれ違い間際に南北くんの顔を見るなり驚いた様子で、


(=_=`)「……あ、あなたさまは……!?」

(  ̄д ̄)「ん? あんた、確かこないだ権が連れてた……それにそのバカでかい樽は何だ?」

(=_=`)「……紀州浪人、大藪八助と申す。実は……先日のあなた様の予言が……当たりまして……」

(; ̄д ̄)「予言っつーか観相なんだけど、まさかその樽……」


 八助の話によると、つい昨夜のこと。
 極道稼業で恨みを買っていた相手に待ち伏せされた権は、急所を一突き。
 あっさりと帰らぬ人になってしまったとのことでした。

 チンピラの世界は薄情なもの。南北くんもそれは身にしみて知っています。
 権の舎弟達も、兄貴分の死に情けも見せず蜘蛛の子を散らすように去った中、しかし八助だけが桶樽を背負ってここまで遺体を運んできたのでした。
 この浪人の心根に切なくも温かいものを感じながら、南北くんは早速、八助を案内して、権を墓所内に葬ってやることにしました。

 桶から出して湯灌をし、死に装束を着せながら観察したかつての舎弟からは、
 完全に動きを止めた権の顔から、あの凶相は……やはり消え失せていました。

 そうして弔いを終えた南北くんの前で突然、八助は地に両手を突いて深々と頭を下げると、


(=_=`)「……あの、先生」

(  ̄д ̄)「は? 先生?」

(=_=`)「……はい。先生、その観相の腕前、そして心意気にこの大藪八助、いたく感服つかまつりました。こうして二度も巡りあわせて頂いたのも何かの縁……どうか、拙者をぜひとも先生の弟子にしていただきたく」

(; ̄д ̄)「で、弟子っ!?」


 これまで観相一筋、学究に邁進してきた南北くん、弟子を取るなど一度も考えたことはありませんでした。
 驚きつつも、しかしこうまで言われて悪い気はしません。

 何より、このお人よしで実直な浪人を、どこか気に入っていたのも確かでした。


(  ̄д ̄)「……よし、わかった。八助っつったよな。それじゃ今日からあんたはこの水野南北の弟子だ!」

(=_=`)「か、かたじけない! 粉骨砕身お仕えいたしまする!」

(; ̄д ̄)「いや奉公じゃねーんだから!」


 ♪てーれれーれーれれれー
 《八助 が なかまにくわわった!》

Σ(; ̄д ̄)「だから何だこのテロップとファンファーレ!?」
 

 こうして初めての門人、八助を迎えた南北くん。
 ついにパーティープレイ、もとい、ここから南北くんの大躍進が始まるのですが、それは続きの講釈にて。


 次回ナンボククエスト第十二話、
「私は一人密かに今更ツチノコを探してみる。無論いない。あ、いた! いたよ!」
 をお楽しみに。嘘です……けれどそんな歌なら実在しま

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ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(10)

 ああすんませんいろいろあってネットを離れて内面をみつめたりコラボライブ見てきたりしてました(ぇー
 おかげさまでというか、迷ったり落胆したこともあるにはありましたがそれらもひっくるめて経験させていただいたお陰で内的にかなり開けた部分というか身についたとでも言うような事柄(?)があるんですがちょいとそれはまだ言葉にしきれませんっつーかできるかー!(ぇぇぇー

 ↑句読点くらいつけようね。


 てか、ひっさびさにコンビニ弁当食ったんですけどね。
 随分ご無沙汰だったから、なんとなくごちそう感覚でw
 だけどいざ食ってみるとですね、噛み締めてるとほーんの僅かに、下がピリッとするような違和感。
 いや腐ってるとかまずいとかじゃないんですよ。
 そんなんじゃなく、もちろん自分の血肉になってくれるものだからありがたく味わっていただいたし、むしろ食べ物を不味いと思うこと自体がほぼ100%ないからそこは美味しいと思いもするんですが、それとは別にして。
 普段玄米味噌汁漬物+αの一汁一二菜を主に続けてると、そういう合成添加物みたいのにも敏感になっちゃうんだろうか、ってふと思ったもので。もちろん真偽はともかく。

 ふとね、青いご飯&薬でやわらかくした肉を思い出した。

 何が言いたいかっつーと結局このリンク貼りたかっただけ(ぇー

 いや、一応飲食カテゴリなんでこんな話も……(何


 てなわけで前回の続き。



 なんですが、ここでちょっとあだるちーな裏話。


 実はこの頃の南北くん、しばしば遊郭通い。

 遊郭ってのはご存知の通り、要はお金を払ってそういう「行為」をいたす場所なわけでよね(気を悪くされたらごめんなさい)。
 しかも、秘伝薬のヒットでお金はあるもんだから、一度にまとめて二人とか三人とか。

 でも、そういう行為目的と言うわけじゃなく。
 体全体から「相」は見て取れるってことは、要は「普段隠されてる部分」にも相はあるんですよ。
 だけど、いくら三助だからって、(特に女性)客の「部分」までまじまじと覗き込むわけにはいかないわけで。

 つまりぶっちゃけ、その部分が持つ「相」の研究目的。
 遊郭の側にしても、羽振りはいいのに「行為」はないってことで、結構な上客だったとかなんとか。

 これをどう思うか、立派と取るかけしからんと取るかはたまた他の感想かは各自のもちろん自由なんですが、
 とにかく南北くんはガチガチの価値観や倫理には囚われず、ぶっちゃけ手段を選ばなかったんですね。

 「学問に聖域なし」

 この姿勢なくして日本一の観相家には成り得なかったのは、想像には難くないでしょう。



 で、そのスタンスは、ある痛ましい事件に出会った際の選択にも現れていて。



 ――事の発端は、松の湯に勤め始めてから三年ほど経ったある日のこと。

 当時南北くんが住まっていた町内に、煙草屋の善兵衛という男がいました。

 その日、町内を駆け巡った大ニュースは、この善兵衛が実はさる大名のご落胤で、その大名が急死し家中に世継ぎもおらず、藩の取り潰しを避けるため善兵衛に白羽の矢が立った、というもの。

 藩の使者から聞いたその話は、善兵衛にとっても寝耳に水。
 一度は武士になって大名駕籠にも乗ってみたい、とは思っていたものの、あまりの事に気分は雲の上、あっという間に上の空。


 ただし、大名の死はまだ内密の事。

 現状で公費を切ると幕府につっこまれるため、身なりを整えるための羽織袴に大小の刀、また仮にも大名たる者の旅に欠かせない駕籠や、駕篭かき・荷持ち・草履取りなどの人足の手配やその旅費も、一旦自腹を切らなければいけない。

 そんな使者の指南に、善兵衛は家財道具から煙草屋まで、あらゆる私財を一切合財売り払います。
 それでもまだ少し足りず、更には一人娘にまで「あとで必ず迎えに来るから」と身売りさせて、ようやく費用を工面。

 出立予定日までの間、善兵衛は奇遇にも、南北くんと同じ長屋の別室を仮住まいにします。
 一町民が大名に栄達、立身出世のシンデレラストーリー。
 周囲から善兵衛がちやほやされる中で一人、南北くんだけは不思議でなりませんでした。


(  ̄д ̄)「妙だな……善兵衛さんの顔に栄達の相なんて、これっぽっちも出てないぞ?」


 それどころか、南北くんの目にはっきりと映る顔の相は、失財と大辛苦、そして、


(; ̄д ̄)「……あれはどう見ても、終わりの大凶相だよなぁ」


 しかし、それを見て取ったからといって、何がどうなるわけでもありません。
 仮にその事を告げたとしても、浮かれ心地の善兵衛は、決して受け容れようとはしなかったでしょう。
 極道あがりで観相修行を続けてきた故に人心の機微に聡い南北くんには、それはわかりきっていました。


 慌しく日は流れ、ついに出立前日。

 共に発つ使者や人足たち、他にご近所や同じ長屋の人々も交えて、善兵衛は住まいの長屋で最後の酒宴を催します。

 宴の最中、酔っぱらった人足たちはひとり、またひとり、ふらふらと酔い覚ましに外へ出て行きました。

 が、随分時間が経ったというのに、誰も戻ってきません。
 痺れを切らし、使者が人足たちを呼び探しに出かけます。


 ……そして、ついに出立の刻限。

 長屋には、羽織袴に大小を挿した武士姿で、ぽつねんと座る善兵衛。

 供たる者は、誰一人戻ってきません。


 その時、南北くんは叫びました。


(  ̄Д ̄)「詐欺だ! みんな、奴らを探して捕まえるぞ!」


 ハッとしたご近所一同、宴の酔いも一気に覚めて全員で部屋を飛び出し、詐欺グループを探し回りました。
 ……が、時既に遅し。その足取りは全くつかめませんでした。

 そして、長屋に帰ってきた南北くん達が見たものは、がらんとした部屋の中で自ら首をくくり、既に冷たくなってしまった善兵衛の遺体でした。


 その死に顔を目の当たりに、南北くんはふと気づきます。


(; ̄д ̄)「凶相が……消えてる?」


 いっそ安らかな善兵衛の死に顔。
 最後まで張り付いていた大凶相が、まるで嘘のように。


 それは、人の死というより、「相」の死、でした。
 言わば、「相」が動きを止めること。

 万物流転、諸行無常。
 人が人として生き続けている限り、「相」は絶えず動き続けている。

 観相学とは、まさにその「動き」や「揺らぎ」を観察・分析することでもあるのだ、と南北くんは悟ります。

 いずれも静止し、一見同じようにも思える、寝顔と死に顔。
 しかしそこには、その動きや揺らぎの有無という決定的な差があるのだ、と。

 ならば、
 観相を窮める者として、その「差」というものを、調べ尽くしてみたい。
 南北くんは決心しました。


(  ̄д ̄)「よし……火葬場で働こう!」


 かくして、日本一の観相家・水野南北、その基盤となる修行時代の、最後のピースが揃おうとしていました。


 つづく。


 次回・ナンボククエスト第十一話、
「俺は師匠になる! 誕生・水野南北中央不敗!?」
 をお楽しみに。超級覇王電影嘘です。

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ストーリー・オブ・ウォーターフィールドサウスノース(9)

 前回の続き。


 髪結い床『サロン・ド・鬼』での仕事を通じて南北くんは、

 特に「顔」や「頭髪」から観る相と境遇の関連性、そのデータを大きく積み上げていきました。

 期間にして、三年。


 その間、南北くんのよく当たる観相の評判を聞きつけて来店し、
 親しい顔見知りになった財界人や公人、大物と類される人々さえもいました。

 しかしそんな中、割合としてはほんの僅かですが、
 南北くんから見て明らかな『悪相』であるにもかかわらず、
 類稀な財や地位を築き、更に幸せな生活を送っている人々もいたのです。

 世間的には充分な的中率を評価されていたにもかかわらず、
 観相を窮めることに意欲を燃やし続ける南北くんは、この『例外』に納得できません。


(; ̄д ̄)「うぅん……これは、顔や髪ばかりを観るだけでは足りないぞ」


 思い出したのは、かつて海常師匠に師事した際に聞かされた、この言葉。


(゚┏ω┓゚ )「観相とはものの姿を観ることじゃ。顔のみならず、脳天から爪先、体毛一本にいたるまで、はたまた立ち姿歩き姿座り姿、その他全ての動作も含めた、人間そのものの姿を観抜き通すことじゃ。ゆえに観相学とは、人間学とも言ってよい」


 要するに、顔は所詮、人間という肉体の一部分に過ぎない。
 「人間学」であるからには、体全体はもちろん、立ち歩き、所作、声、ありとあらゆる「人間を構成する要素」そのものを包括しなければ、いくら顔や頭を睨み続けてもこれ以上は埒があかない。


(  ̄д ̄)「そう、だよな。頭部のデータはもう充分に集まったと思う。だからそろそろ、次は体全体のデータを集める段階に移ってもいいかもしれないな」


 そんなわけで決意を固めた南北くん。
 鬼店長こと平四郎に、退職届を提出します。


(´ム` )「……さようで。寂しくなりやすが、よござんしょう」

(  ̄д ̄)「ごめんね勝手ばっか言って」

(´ム` )「……なんの。これまで本当に随分と助けていただきやした。それに、」


 そう言って、平四郎が向けた視線の先、
 サロン・ド・鬼の出入り口……いや、その更に通りを挟んで向こう側。


(´ム` )「……再就職先が真向かいの銭湯ってことなら、ウチへの客足には影響ありやせんでしょうし」


 南北くんが次に選んだのは、文字通り目と鼻の先。
 サロンド鬼の正面にある、『松の湯』


(´ム` )「……松の湯さんと提携キャンペーンでも組めば、これまで以上の集客だって見込めやす」

(  ̄д ̄)「商魂たくましいなおい」


 元々繁華街の一角であるこの近辺には、遊郭も多数ありました。
 そのため、名のある旦那方が「遊び」に臨んでまず松の湯で身を清め、
 サロン・ド・鬼で身なりを整えるというお約束のコースが定着していたのですがそれはさておき。

 既にご近所で名の知れていた南北くん、松の湯側もあっさり〝とらば~ゆ〟を受け容れてくれました。

 が、


(  ̄д ̄)「体全体を見るには、裸を見るのが一番。だからこその銭湯なんだけど……むぅ」


 この頃の銭湯で働く人々の間には、その担当仕事による階級がありました。

 まず新人は「木ひろい」、つまり燃料の焚き木集めとその運搬を任されます。
 それを充分こなせるようになったら次は「釜炊き」、要は火の番、ボイラー係。
 更に釜炊きでの働きを認められたら「湯番」、湯温や浴室全体に目を配り采配をとる、サッカーで言えば一種のMF(ミッドフィルダー)。
 それを長らく勤め上げると「三助」に抜擢されます。

 三助とは、湯番がMFならこちらはFW(フォワード)。
 お客さんの希望に応じて、背中を洗い流して回る役割。

 ちなみに番台に座る「番頭」は、大抵銭湯の主人やそれに準じる人物(女房など)なので、事実上「三助」が従業員の最高ランクなのです。

 観相修行には、直接客の体に触れるこの「三助」が最も、圧倒的に都合がいいのは言うまでもありません……が。


(; ̄д ̄)「この調子じゃ、三助になるのに何年かかるかわかんないぞ。なんとかして手を打たないと」


 働き始めてすぐに業界の実態を知った南北くん。
 持ち前の機転をきかせて、即行動に移ります。

 「三助」は、確かに従業員中で最高ランクの身分なのですが、最高なだけあって、これが中々の一仕事。
 先に紹介したとおり、遊郭通いの旦那や、その遊郭で働く女性たちも多く訪れるこの松の湯では、背中洗い希望のお客さんは思いの外多く、三助の出番は絶えない有様。
 来店客を待たせず、更に順番を間違えず、洗っては流し洗っては流し、気を使う肉体労働なのです。

 そのため、三助連中の中には、


(-公-;)(-公-;)「できればもっと楽な仕事がいいなぁ~。あーかったりぃ」


 なんて人もいるわけで。


(  ̄д ̄)「ちーっす、新入りの水野南北でーっす。三助の先輩方にはご挨拶の印にこれを」

Σ(゚o゚;)(゚o゚;)「おおっ! 特上寿司大盛り! しかも大トロ! 最高級大間のマグロ!」

(  ̄д ̄)「あ、こっちは幻の銘酒詰め合わせ、あとゴディバのトリュフにロイズの生チョコ」

(゚o゚;)(゚o゚;)「こんなたくさん!? 新人くんホントにいいの!?」

(  ̄д ̄)「もちろんっすよ。全部遠慮なくめしあがってくださいな」

(^o^*)(^o^*)「いやっほーう! 新人くんサイコー! 三助仕事の疲れもふっとぶぜー」

(  ̄д ̄)「ほうほう、三助ってのはそんなにしんどいっすか」

(-公-;)(-公-;)「そりゃもう、任されたからにはやらなきゃなんないけど、できれば代わってもらいたいくらいでね……」

(  ̄д ̄)「だったらひとつ、ものは相談なんですが……」



 ――新人戦闘銭湯員・水野南北。

 こうしてショッカー松の湯入社早々、幹部三助を任されることになりました。


 サロン・ド・鬼の時と同じく、
「給料要らず、月に数度の休みをもらえればそれでOK」
 という条件を初めに提示していたのも、スムーズに話が進んだ理由のひとつ。

 見習い助手ではあるけれど、全て計画通り( ̄ー ̄ )ニヤリ



 ハードな三助仕事ですが、南北くんにとっては宝の山。
 獲物取り放題の猟場に入ったハンターのように目を輝かせて、文字通り八面六臂の大活躍。

 さらには、客が南北くんに投げてくれるチップも、「見習いだから」とそのまま兄貴分の三助にあげてしまうものだから、あっというまに従業員間でも大変可愛がられる存在になっていきました。

 そうして、やっぱりお客さんに何気なく話しかけたりして、その全身の相と境遇に関するデータをどんどん積み上げていきます。


(^∀^*)「おーう兄ちゃん、背中流すのうまいやんか」

(  ̄д ̄)「あはは、ありがとうございます。ところでお客さん、観たところ何か家庭の悩みでもあるんじゃないですか?」

(^A^*)「そーなんよ聞いてくれ。実はさ……」


 南北くんにとって、目の前のお客さん一人一人、全員がもれなく、観相を窮めるための大切な師であり、貴重な人間標本。
 自然、感謝と畏敬の念から、洗い方もコリをほぐすような心のこもったものになっていきます。

 切れ味鋭い観相と丁寧なサービス。
 にわか三助の南北くんは、ここでも評判上々。松の湯の売り上げアップに大貢献。

 観相師としてだけではない、水野南北という人間そのものの人気も、確実に高まっていました。

 そして、当の南北くんは。


(  ̄д ̄)「やっぱり、師匠の言うとおり人相とは顔だけじゃない」


 という確信を、本当に確かなものにしていきました。
 この三助時代の膨大な観察データが、その後の観相師・水野南北の業績に多大な影響を与えたのは想像に難くありません。



 ……そんなこんなで時は過ぎ。

 またも三年後。

 三助勤めで着実に観相修行を進める南北くんの身近で起きた、あるひとつの痛ましい事件が、彼にまた新たな決意を抱かせることになりました。

 その事件とは……続きの講釈で。



 次回・ナンボククエスト第十話、
「わたしのおはかのまえでなかないでくださいそこにゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらぺぺぺぺぺぺぺ」
 をお楽しみに。嘘です。


(゚┏ω┓゚ )「ゆ

(  ̄Д ̄)「ゆけ勇者もょもと!とかまさかほざく気じゃないっすよね師匠」

(゚┏ω┓゚ )「……腕を上げたのう」

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