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■第3章:ちょっとだけファンタジー ―― 第3話
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拓実達が入学して、二度目の土曜日のことだった。
「あのう、いいっスか」
昼下がり。全員揃ったうたいしえあ部を、とある男子生徒が訪れた。
「あら? 三宅くん?」
出入り口に佇むやや小太り気味な彼の姿に、真っ先に反応したのはほのかだった。
「ほのか、知り合いか?」
「はい、同じクラスの三宅くんです」
あずさの問いにそう答え、ほのかはその少年へと歩み寄った。
「三宅くん、どうしたの?」
「あ、弓削さん……っと、ここに来れば困った事を解決してくれるって聞いたっスから……弓削さんはまさかここの?」
「うん、わたしもここの部員なの」
「そ、そうだったっスか……」
少し据わりの悪い表情を見せた三宅。だが、
「安心してくれたまえ。我々は秘密は厳守する」
ほのかと同じく歩み寄ってきたあずさの姿に、彼はしばし見惚れて口をぽかんと開けた。
「何か依頼があってわざわざ来てくれたのだろう? 言いにくいことなら私が単独で聞こう」
「え……あ、あー、まあ、大丈夫っス。恥ずかしいのは確かっスけど、聞かれて困る事じゃないっスから」
あずさに問われて我に返った三宅は、慌てて顔の前でぶんぶんと手を振った。
「そうか。では教えて頂くとしよう。立ち話もなんだ、こっちに来て座ってくれたまえ」
そうしてあずさに促され、ほのかに案内されて三宅は部室に歩み入り、出された椅子に腰掛けた。あずさも椅子を取り、机を挟んで向かい合うように座った。
「さて。では、今日はどういう用件でこのうたいしえあ部へ?」
席についたあずさは両肘を机に立て、軽く組んだ両手を顎の前に持ってくると、某第三新東京市地下の特務機関総司令のような威厳を醸し出しながら切り出した。
あれもあずさの地なのだろうが、傍目にはまるで尋問だ、と拓実はこっそり苦笑。
だが、さすがに微笑みは忘れていない。吐息も触れそうな距離で明眸皓歯な上級生の瞳に射抜かれ、三宅はどぎまぎしつつも、
「その……実は自分には、寝ても醒めても忘れられない存在がいるっス」
一旦唇を引き絞り、膝の上で拳を握ると、思い切ってそう告げた。
おおっ、これはコイバナですかっ? と、片隅で機材などを整理していたゆいの耳が二周りほど巨大化した。
一緒に作業していた拓実は幼馴染みのそんなデバガメっぷりに苦笑しつつも、やっぱり気になるのでそれとなく耳を澄ます。
「ほう、それはいったい?」
一切茶化す様子もなく、あくまで平静に、あずさは問いかける。
「それは……」
しばしの沈黙。離れて立つほのかが息を呑み、そして、ついに三宅は告白した。
「それはっ……やきそばパンっス!!!」
...To be Continued...
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sarasa 2011年12月02日(Fri)05時59分 編集・削除
やきそばぱんとな?
…給食によく出ていた人気メニュー、やきそば食べたーい。
寸胴容器に入った、麺のびのびの~。