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■第3章:ちょっとだけファンタジー ―― 第6話
「「「へ?」」」
拓実、ゆい、三宅の目が揃って点になった。
「何を呆けている。そのままの意味だ。麺を打ってパン生地をこねるところからやるぞ」
「さっきあずさっちには言ったけどー、材料は一通り揃ってるから心配しなくていいわよー」
大真面目なあずさに続いてダメ押しするかのように、部長さんはどこまでも朗らか。
ちなみにほのかは全く動じていない。調理室に来た時点で予想できていたらしい。
「こういう一見大雑把そうなメニューも、ちゃんと丁寧に作れば立派なものができて面白いのよー。だから楽しんで作りましょー。うれしいたのしいおいしい、がうちのモットーなのよー」
部長さんはニコニコとそう言いながら、いまだ唖然とする拓実達にてきぱきとエプロンを手渡した。
「へー、さっすが二人とも男の子だわー。イイ生地こねるのって力がいるのよねー」
元は小麦粉だった塊相手にうにうにと格闘するエプロン姿の拓実、そして三宅の後ろから、部長さんはキャベツを一玉片手に感心した笑顔を向けた。
「あ、いえっ、ありがとう、ございます……」
思いがけず褒められたのが照れくさくなって、拓実は微妙に口篭りながら返した。
表情から察するに、三宅も概ね似たような心境らしい。
部長さんは満足そうに、「くぅ~、やっぱ年下の男の子っていいわー」などとキャベツを指先でバスケットボールよろしく器用に回しながら去っていった。
料理部には女子しかいない。
よって、現在調理実習室にいるのも拓実と三宅を除けば全員女子だ。
おかげで二人ともムズムズと落ち着かないものを抱いていた。
だが、逆に言えば男子は自分一人ではない、という『よりどころ』を二人は互いに感じている。
また居心地の悪さを打ち消すのにも、目の前の料理という作業はうってつけだった。自然と打ち解け、即席レベルながら連携もうまく機能するようになっていた。
果たして、あずさはそれを見越して拓実を同行させたのかは定かではないが。
「どうだ、三宅君に陣内」
と、今度はそのあずさが二人の元へとやってきた。
なぜか彼女だけ割烹着だった。しかもやたらと似合っている。
「結構、たいへんっ、なん、ですねっ……」
「そう、だねっ、陣内君、ふぅ……」
男子二名、料理経験ほぼ皆無。言わずもがなの悪戦苦闘中。
「まあ、工場では機械でやるのだろうがな。やはりパンも麺も手ごね、もとい手作り感のある方が美味しく思えるものだ」
微笑ましさに僅かな苦笑いをブレンドして、あずさはそんな光景を眺めつつ言う。
「三宅君、君は自分でやきそばパンを作った経験はないだろう?」
「えっ、はい。まあ、その通りっス。でも何でわかったっスか?」
あずさの指摘に、三宅は狐につままれたような顔をして首を傾げた。
「うむ、身も蓋もない言い方をすれば勘なんだが、君がやきそばパンについて語ってくれた時、手に入れる方法として買う事しか口にしなかったからな」
それを聞いて拓実も納得した。言われて思い返せば、先刻の三宅の依頼ではやきそばパンを『買う』ことに執着しているようなニュアンスだった。
...To be Continued...
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sarasa 2011年12月05日(Mon)11時02分 編集・削除
今朝のEテレ、まいんちゃんが、まさにやきそばパン作っててびっくりとー。