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うたいしこと。(15) :第2章-8

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 続き
 



■第2章:新入部員初任務 ―― 第8話



    ***


 拓実達の通う県立高校。
 近傍には同名の小中学校も位置し、この一帯である種の擬似一貫教育を構築している。

「あの……」

 拓実がおずおずと問いかけた。
 あずさ、ゆい、拓実の三人は部室を出、校舎玄関の前に来ている。

「ここ、小学校ですよね?」

「ああ、そうだが」

 至極あっさりと、あずさは返した。 

 そう。目の前の校舎は、小学校。
 今三人が立っているのは、高校と道路を挟んで向かいにある、小学校の玄関前だった。

「えっと、依頼は……どうしたんですか?」

「うむ、依頼人はこの中なのだ」

 更なる問いに事もなげにそう言って、あずさは遠慮なく玄関から建物内へと踏み込んだ。
 ゆいがちょこちょことした足取りで続き、我に返った拓実も慌てて後を追った。


 辿り着いた先は職員室。
 拓実とゆいを廊下に待たせて、あずさは一人で中に入った。どうやら立入許可を取っているらしい。
 とはいえあずさはここに来るのも慣れているらしく、中にいた教師とフレンドリーに談笑している。
 卒業生なのかな、と思い至る拓実の横で、

「あれ? ねぇたっくんこれ見て」

 ふと、ゆいが何かに気付いて彼の袖を引っ張った。
 拓実が振り向くと、ゆいは職員室の出入り口の脇に設置してあった小さな投函箱を指していた。
 よく見ると、前面に何やら書かれている。

「何だこれ……先生やお友達に話しにくい悩みや困ったことがあれば相談に乗りますお気軽にどうぞ、うたいしえあ部?」

「たっくん、これってもしかして」

 ゆいがそう口にしたと同時、職員室からあずさが退出してきた。

「あ、部長っ、この箱って!」

「ああ、気付いたか。我が部への依頼状入れだ。こことあっちの中学に設置してある。毎朝私が登校前に回収しているからな。おかげでここの先生方とも顔見知りだ」

「やっぱりーっ!」

 予想が当たったのがそんなに嬉しいのか、ゆいは満面の笑みでひとつ跳ね、再びあずさの後について歩き出した。誰でも想像できそうなものだが、とは拓実は言わないでおく。
 しかし、部活のためにそこまでやるのか、というのが拓実の正直な感想だった。
 道すがら、それをあずさへ率直にぶつけてみると、

「うむ。私があの高校を選んだのも、すぐそばに小中学校があるからだ。年上の人々のありがとうを集めるチャンスは比較的どこにでも転がっているが、同年代や年下からもとなると、やはり学校に網を張っておくのが一番なのでな」

 したたかさを裏付けるかのように、あずさは黒髪をなびかせながら不敵に微笑んだ。


    ***


 次に三人が辿り着いたのは校舎の外、裏庭らしき場所にひっそりと建つ飼育小屋だった。
 そして、待ち構えていたのは一人の少女。

「君が相沢かな(あいざわ・―)さんだね」

「は、はい……」

 あずさが話しかけると、女の子は少々緊張した面持ちで返事した。

「はじめまして。向かいの高校の三年、うたいしえあ部部長の鳳凰院あずさだ。こっちは部員で一年の神原ゆいと陣内拓実。よろしく頼む」

「はじめましてっ! よろしくっ、かなちゃんっ」

「よろしく」

「はい、よ、よろしくおねがいします……」

 背格好からして小学四年くらいだろうか。肩までの髪を両サイドで可愛くまとめたその少女――かなは、年上のお兄さんお姉さん達に恐縮した様子で、ぺこりと行儀よくお辞儀した。

「依頼状は読ませてもらったよ。早速だが、まずは見せてもらえないか?」

「はい、あの、こっちです……」

 つまりこの子が今回の依頼人という事らしい。
 本題を切り出したあずさに促され、かなは飼育小屋の鍵を開け、金網張りの中へと三人を案内した。
 拓実達がその一角に足を踏み入れた時、きゅうんきゅうん、と片隅から鳴き声が届いた。

「この子たちです……」

 かなは、その声の元……一抱えほどのダンボール箱へと歩み寄り、その中の存在を指し示した。

「うっわぁー、かっわいいーっ!」

 我先に覗き込んだゆいが、アホ毛をぴこぴこ揺らしつつ歓声を上げた。
 そこには、あどけない顔の子犬が二匹。

「おお、確かにこれはかわいい。和むな」

「こいぬちゃんだー! もっふもふーっ」

「ふむ、足は小さめだな。それほど大型の種ではなさそうだ。おお、おお……」

 そして女子二名、子犬を囲んで明らかに興奮していた。
 ゆいは言わずもがな、あずさも子犬に指をぺろぺろ舐められてその顔をとろけさせている。
 見た目クールなようで、その実可愛いものには目がないらしい。この部長さんは。

「えっと、あの、部長……この子犬がどうかしたんですか?」

「ん? あ、おお、そうだった……こほん。今回の依頼内容なんだがな」

 と、置き去りにされしばし呆気に取られていた拓実がおずおずと発した問い掛けに、子犬を一匹胸に抱いたままのあずさは、我に返った様子で向き直って、告げた。

「有り体に言えば、この子らの里親探しだ」



 ...To be Continued...

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コメント一覧

ponsun URL 2011年11月17日(Thu)05時50分 編集・削除

あずさも子犬に指をぺろぺろ舐められて
その顔をとろけさせている


部長さんもナイスキャラ、ですね(嬉笑)
なんだか、ホッと安心します


ありがとうございます

くーこ 2011年11月17日(Thu)16時42分 編集・削除

本文読まずにponsunのコメントだけ読んで、
「えっ!?部長って私のことっ!?」
って一瞬ドキッとした私は、
すでに部長病だなぁ・・・

せらつ@中の人 2011年11月18日(Fri)05時32分 編集・削除

>ponsunさん
 ギャップ萌えというやつです(ぇー
 ありがとうございます^^


>くーこさん
 部長病w
 しかしコメ読んだ瞬間ふと気づいたんですが、
 這いよれニャル子さんつーラノベに「クー子」ってキャラが出るんですよ(ぇ

 いかん、この後何と続けるべきか困る……(ぇー


 ありがとうございますw

くーこ 2011年11月18日(Fri)09時53分 編集・削除

今、ググってみましたが、クー子さんナカナカ素敵なキャラですね。笑
清水クーコさんと言われるよりはうれしいかも(ぇ ←
(前々から気になってたんですが、
この『(ぇ』はせらつかさんのオリジナルですか?
それともどこか他に出ドコが?)

せらつ@中の人 2011年11月19日(Sat)07時11分 編集・削除

 素敵と書いてヘンタイと自動翻訳してしまったのは作者の万太さんのせいですからねっ!?(ダブルで失礼な責任転嫁


 (ぇ はですねー、
 特にどこか出典があるわけじゃないんですが、
 たぶん昔ネトゲやってる間に、他の誰かが使ってたのか何かがいつのまにか身についたんだと思われます^^;
 なのでオリジナルといえばオリジナルだしオリジナルじゃないといえばオリジナルじゃないけどオリジナルラブっていいよね!(何

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