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■第4章:最後のありがとう ―― 第2話
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「ふふ……」
「ほよ? どーしたんですか部長っ? いきなり笑っていいともとかですかっ?」
「ん? いやなに。昨日、ライブを決めた時の陣内の慌てぶりを思い出してつい、な」
「昨日……あわっ!? あぁぁ~……うぅぅ、ゆい、またやっちゃったんだぁ……」
「何だ、どうした神原? 急に頭を抱えて」
「あっ、えっと、そのぅ……なんてゆーか……ゆい、またたっくんに勢いで迷惑かけちゃった、って……はぅぅ」
「……はははっ、気に病むことはないさ神原。私の見たところ、陣内とて本気で迷惑がってなどいないと思うがな」
「そう……ですかぁ……?」
「ああ、いずれにせよ要は杞憂、取り越し苦労だとと思っておいたほうが、何より神原自身のためにもいい」
「うぅ……それは、そう、ですよねー……」
「しかし、だ。また、とはどういうことだ?」
「あぅ、えとその、だいぶ昔にゆいが強引にボランティアに誘っちゃって、たっくんすっごく嫌がったことがあったんです……。たっくん優しいから、ゆいに気を使って口では何にも言わなかったですけど、顔とか見てれば……わかりますから……」
「ふむ。なるほどな。しかしもう過ぎた事なのだろう? 過去の陣内がそうであっても、今の陣内とまるで同じであるはずがあるまい」
「……部長のいう通りかもしれませんけどぉ……それでもたっくん、面倒臭がってるのは確かだと思うんです……ギターだって、別に弾くのが好きってわけじゃないですし……」
「……それこそ、心配無用だと思うがな、私は」
「ほえ?」
「以前はどうだったか知らんが、今の陣内は恐らく、いや間違いなく、誰かの喜びのために力を尽くすことの喜びに目覚めつつある」
「うぅ……そうなら、いいんですけど……」
「神原。幼馴染というくらいなら、信じてやるといい。私は賭けてもいいぞ」
「部長……?」
「元々陣内には、こうと決めたらとことん挑み続けるだけの気概がある。それこそ、たった独りでも、誰にも認められずとも……大した奴だよ」
「……」
「そして……口ではどう言おうとも、今の陣内はちゃんと、目的のために課された努力を尽くしてくる。誰かの喜びと、笑顔の呼び水となるという目的の、な。私の知る今の陣内は、そういう奴だ」
「……部長は……」
「……ん?」
「部長は、たっくんのことをよく見てるんですね……」
「ん……それはほんの少しばかり違うな」
「ほえ?」
「私は、このうたいしえあ部にいてくれている部員として、彼を信じている。あるいは……多少数奇な巡り合いを果たさせてくれた、この縁というものをな」
「それって、どういう……」
「ん……まあ、そう深い意味ではないさ。もっとも、観察していないというわけでもないしな。まがりなりにも部長たるもの、部員の機微に聡くなくてはならんのも確かだ」
「本当に、それだけなのかな……」
「ん? 何か言ったか?」
「あ、いえいえっ、なにもにもふぁいてぃんぐにもっ!」
「……? あの映画はそんな題名だったか? 何か違う気がするが……」
(部長……きっと知ってるんだ。昔のたっくんを……多分、逆上がりの時の……)
...To be Continued...
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