はーいみんあー、おまたせしたよー(何
とゆーわけで今回は前置きすっとばしてさっさと前回の続き。
稀代の観相師・水野南北。
その少年時代の名前は、熊太。
五歳の時に両親と死別した熊太は、錠前職人である叔父に引き取られ、鍵や錠作りの技術を叩き込まれました。
ゆえに、チンピラ稼業にいそしんでいたころの通り名が、鍵屋の熊太。
その熊太が、死を予言された一年を生き長らえ、ついに乗り切ったかに見えたある日。
熊太に決定的なひとつの「死」を与える人物が、町を歩く彼の前に現れました。
その人物とは……。
(  ̄д ̄)「……ん?」
「……む?」 |易|(゚┏ω┓゚ )|占|
そう。
その人物とは、一年前に死の易断を下した易者その人。
思いがけない再会に、しかし驚いたのはむしろ易者の方でした。
(゚┏ω┓゚ )「なんと……お主まだ生きておったのか!?」
Σ(  ̄д ̄)「再会して第一声がそれかよ! ってか俺のこと憶えてるのか?」
(゚┏ω┓゚ )「いやすまんすまん。あれほどの強烈な悪相の持ち主もそうそうおらんものでな」
(  ̄д ̄)「うわ失礼のダブルストレイフだよ。悪かったな顔が悪くて」
(゚┏ω┓゚ )「そんなことよりもじゃ。ふむぅ……面妖じゃのう」
(; ̄д ̄)「さらっと流したよこのオッサン。つーかまた人の顔ジロジロ見て面妖って、失礼のジェットストリームアタックじゃねーか」
(゚┏ω┓゚ )「お主の面構えが最悪なのは事実じゃがそういう意味ではない。一年前に見たお主の死相……あれは見間違えようもなく強烈なものじゃった。しかし……」
(; ̄д ̄)「もういいよ……で、しかし何?」
(゚┏ω┓゚ )「消えておるんじゃよ。きれいさっぱり、跡形もなくのう」
(  ̄д ̄)「消え……何が?」
(゚┏ω┓゚ )「死相がじゃよ」
(  ̄д ̄)「はい?」
(゚┏ω┓゚ )「かような場合、考え得る原因はただひとつじゃ。お主、この一年の間に善行に励むなりして大きな功徳を積んだのではないか?」
(  ̄д ̄)「……こういっちゃなんだけど、俺みたいなのって善行とか功徳ってやつからは一番程遠い人種だよ?」
(゚┏ω┓゚ )「そんなわけアルミ缶の上にあるみかん」
(  ̄д ̄)「何いきなりわけのわからんことを」
(゚┏ω┓゚ )「とにかく何かあるはずじゃ。心当たりはないかの? この一年、何をして暮らしておった?」
Σ(  ̄д ̄)「何を、って……あ、そういえば」
ふと思い至り、鉄眼寺の老僧に出された入門試験のことを易者に話すと、
(゚┏ω┓゚ )「それじゃ! 食を節し、みだりに食わざることはまさに大きな功徳じゃよ」
Σ(  ̄д ̄)「ええっ!? そうなん? ってかなんでそれが功徳になるの?」
(゚┏ω┓゚ )「単純なことじゃ。『天は無禄の人を生ぜず』という。逆に言えば、天から与えられる命の恵み、即ち天禄は人それぞれ分限が定められておる」
(  ̄д ̄)「ほうほう」
(゚┏ω┓゚ )「この天禄には当然、食も含まれる。食禄とでも呼ぶかの。そして食とは命を繋ぐ最も重要な禄じゃ。その食禄を粗食少食にて節すれば、まさしく天地に命を献ずるのと同じことじゃ。また慎食で生じた余禄は他の禄へと差し向けられ、運命全般を好転させるのじゃよ」
(  ̄д ̄)「へぇ……」
(゚┏ω┓゚ )「逆に大食肉食飲酒に溺れれば、この食禄をあっという間に食い尽くしてしまう。そうなれば他の禄をも食い潰すこととなり、運命全般が劣悪なものとなってくるのじゃ」
(  ̄д ̄)「そうだったのか……じゃあ、もしかしたら酒代欲しさに事件起こしてとっ捕まるような俺自身が、死相を作り出してたってことか……?」
(゚┏ω┓゚ )「ふむ。顔に似合わず中々頭の回転は鋭いのう。じゃが、それだけではあるまい。何か他にも功徳に繋がる善行を為してきたのではないか?」
(  ̄д ̄)「うん……言われてみれば確かに、鉄眼寺で掃除手伝ったり無縁仏の墓作ったりしたよ。腹減らしの運動のつもりだったから、功徳だ善行だなんて思いもしなかったけど……」
(゚┏ω┓゚ )「やはりの。そういった諸々の功徳が、お主の剣難の相を書き換えたのじゃ。供養された仏共が、お礼とばかりにお主に取り付いていた悪霊を連れて行ったのかもしれんのう」
(; ̄д ̄)「……」
頭の中で、易者の言葉と、かつて牢屋で得た『人相』という気付きが、繋がっていきました。
人の顔を見ただけでそこまで見通せる観相学というものは、なんと奥の深い術なのだろう。
人生一寸先は闇、何が起こるかわからないなどというのは、観相学を知らない人間の世迷言なんじゃないか、と。
その瞬間。
弾けるような一つの決意が、彼を衝動的に動かしました。
(  ̄Д ̄)「おっさん! 俺を弟子にしてくれ!」
(゚┏ω┓゚ )「んむ? しかしお主は寺に入門するつもりで鳩のような食生活を続けておったのではないのか? クルッポー」
(  ̄Д ̄)「鳩で悪かったなつーか鳴き真似やめ! てか直感キタ! ビンビンキタんっすよ! 牢屋でいろんな罪人の人相が気になって、おっさんに死ぬ言われて、鉄眼寺に迷い込んで課題出されて、そして今日またおっさんに会って……。それもこれも全部、その観相学っていう見えない糸……そう、縁だったんだって!」
(゚┏ω┓゚ )「ふむ……面白い若者じゃの。顔は悪いが」
(  ̄Д ̄)「ほっとけ!」
(゚┏ω┓゚ )「よかろう。ならば今日からお主はワシの弟子じゃ」
(  ̄Д ̄)「いいの!? いーやっほう!」
(゚┏ω┓゚ )「やけっぱち気味にテンション高いのう」
(  ̄Д ̄)/「ハイルイルパラッツォ!!」
(゚┏ω┓゚ )「その敬礼やめい。エクセルネタなんぞどれだけ通じると思っとる。というか話が進まんではないか、ほどほどにせんと弟子入り取り消すぞ」
(; ̄д ̄)「はい……」
(゚┏ω┓゚ )「うむ……コホン。我が名は水野海常。お主、名前は?」
(; ̄д ̄)「え……熊太っていいます。鍵屋の熊太」
(゚┏ω┓゚ )「そうか。では、鍵屋熊太は今日、死んだ!」
(; ̄Д ̄)「はぁっ!?」
(゚┏ω┓゚ )「そしてまた今日、お主は誕生した! 今日からお主の名は南北!」
(; ̄д ̄)「ナンボク……っすか?」
(゚┏ω┓゚ )「迷故三界城 悟故十方空 本来無東西 何処有南北」
(; ̄д ̄)「???」
(゚┏ω┓゚ )「迷うが故に三界は城、悟るが故に十方は空、本来東西無く、何処にか南北あらん。ここより南北を賜いて、さらに我が姓を加えて水野南北!」
(  ̄д ̄)「水野南北……」
(゚┏ω┓゚ )「どうじゃ、カッコええじゃろ」
(  ̄д ̄)「何かよくわからんけど……うん、悪くないや」
(゚┏ω┓゚ )「うむうむ。お主はたった今、新たな人間として新たな生を得た! その生まれ変わった新たな心で、一心不乱に観相へと打ち込むがよい!」
(  ̄Д ̄)「う、ういっす! 師匠!」
(゚┏ω┓゚ )「行け、南北! 世界の平和を取り戻すのだ!」
Σ(  ̄Д ̄)「何かいきなり話のスケールデカくなった!?」
こうして観相の道を歩むこととなった南北くん。
彼の世界は、この日を境に大きく拡がり始めてゆきます。
が、それはまた今後のお話にて。
次回、ナンボククエスト第六話「それをすてるなんてとんでもない!」をお楽しみに。嘘です。
つづく。
あまがっぱ 2011年02月26日(Sat)17時50分 編集・削除
左右に迷うがゆえに上下あり…嘘?