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〔 ▽ △ ▽ 〕
Σ(; ̄Д ̄)「お、鬼ぃ!?」 |<V ̄V>|
前回の続き。
湯船に浸かる南北くんの眼前に突如現れた、鬼の顔。
とんでもなく凄まじい形相。
文字通り鬼気迫る、苛烈で凶悪な表情の、鬼。
しかもそれは、大人の背中ほどもある巨大で、南北くんの頭など一口で丸呑みできそうな。
(; ̄д ̄)(うっそーもしかして閻魔さんの使いっすか!? 今俺死相とか出てなかったはずだよ!?)
と、その時。
あまりのことに一瞬凍りついた南北くんの前で、その鬼は唐突に、「振り返り」ました。
(´ム` )「……おっと、ごめんなすって」
(; ̄д ̄)「あ、いえ……(って刺青かよ!!)」
そう。
鬼顔の正体は、隣にいて先に湯船を出ようとした見知らぬ男の背中一面に彫られた、タトゥーでした。
が、そうと気付いた南北くんに、ふと疑問が浮かびます。
極道の世界に長らく身を置いていた彼でさえ、これほどまでに精緻かつド迫力の刺青はお目にかかったことがありません。
それでいて、男の顔つきや所作、口調や言葉――すなわち「相」には、全くアウトローの気配が見受けられないのです。
むしろ、温和で誠実で実直なカタギの男そのもの。
しかし。
その疑問を口に出す間もなく、男は浴場を出て行ってしまいました。
(; ̄д ̄)「なんだったんだ、今の……」
呆然と見送った南北くんが、元々頭に置いてあった「本題」を思い出したのは、銭湯を後にしてからでした。
さて。
本題とは、言うまでもなく「観相修行をさらに進展させるための環境」探し。
考えながらぶらぶらと町を歩いていた湯上がり南北くんの視界に、ある看板が飛び込んできました。
『髪結い床 【サロン・ド・鬼】』
Σ(  ̄Д ̄)「電グルかよ!」
思わずツッコミつつも、しかし鬼つながりのシンクロを南北くんは見逃しません。
髪結い。
今でいう、理髪店。
(  ̄д ̄)「……そうか、髪結いだ! これなら黙っていても人がきてくれて、しかも頭や顔を触るからいろんな人相を間近で観察できるじゃん!」
思いたったが吉日。
行動派の南北くんは、すぐさまサロン・ド・鬼へと突撃敢行。
(´ム` )「……へいらっしゃい」
Σ(  ̄Д ̄)「だから鬼ってことかよ!」
偶然もここまで来ると運命的。
先程の刺青の男は、ここの理容師兼店長でした。
これはまさしく、神仏の導き。
きっとこの髪結い床で働けという啓示に違いない。
ひとまずは客として、店長にヘアケアをしてもらいつつ、南北くんはそれとなく口火を切りました。
(  ̄д ̄)「ご主人、親との縁が薄いね。子供の頃随分苦労したんじゃないっすか?」
(´ム` )「……大したことじゃござんせん」
(  ̄д ̄)「まあでも、この先は安泰だよ。幸せに暮らせる。ただ胃腸の病気には気をつけて養生したほうがいいよ」
(´ム` )「……!」
わずかに眉をひそめる店長。
心なしか薄気味悪そうなその反応が、境遇だけでなく持病さえもずばり言い当てられていることを如実に示していました。
(´ム` )「……お客さん、何者で?」
(  ̄д ̄)「いや、ちょっと観相の心得があるから」
(´ム` )「……へぇ、そいつぁまた」
(  ̄д ̄)「ところでご主人、ものは相談なんだけど……」
かくかくしかじか、と、観相修行のためにここで働かせてほしいと持ちかけました。
(  ̄д ̄)「あ、給料はいらないですよ。定期的に休みさえもらえれば」
(´ム` )「……まあ、よござんしょう」
こうして、難なく髪結い床の助手として雇ってもらえることに。
ちなみにこの頃南北くんは、かつて海常師匠に教わって調合した秘伝薬のヒットで、食うには困らないだけの収入がありました。
タダ働きを申し出ることができたのは、そのおかげ。
翌日からサロン・ド・鬼で働き始めた南北くん。
髪結いの技術なんて持ち合わせていないものの、見習い助手として器用に立ち回りながら、持ち前の話術でちゃっかりと客の身の上話を聞きだしたりしています。
境遇と相との共通点、そのデータを着実に積み上げていったのです。
(||-公-)「うちの長男は病弱、次男は芸者と駆け落ち、末っ子は放蕩三昧で、ほんま私ほど子供運に恵まれん人間もおまへんよ、まったく。あー顔剃り気持ちええわぁ」
(  ̄д ̄)「そうですかー。(ふむふむ。この顔とあの顔は子供の悩みが絶えない顔、と。共通点は……なるほど、そういうことか)」
お客さんから見ても、南北くんの働きにはデメリットがありません。
普段の愚痴や泣き言、悩みを嫌な顔一つせずに聞いてもらえるし、更に南北くんの観相がなかなかよく当たる。
そんな評判が口コミで広がり、やがてサロン・ド・鬼には大店の旦那や売れっ子芸妓など、所謂VIPまでも訪れるようになっていきました。
おかげで店は大繁盛。店長にとっても、嬉しい悲鳴です。
立場としては一従業員、それもただの見習いでありながら、
『商いとは売り手よし、買い手よし、世間よし』
すなわち『三方よし』という近江商人の心得を、南北くんは地でいっていたのです。
ところで余談。
かの『鬼店長』が、カタギの実直な人間でありながら、なぜあのような刺青を背負っているのか。
そこには、こんなエピソードがありました。
彼の名は、平四郎。
幼くして死に別れた彼の父親は、腕のいい鬼瓦職人でした。
母親はそれより先に他界し、たらい回しで過ごした孤独な子供時代を経ながらも、実直な平四郎はまっとうに自立した生活を送っていました。
しかし、彼の胸中にずっとわだかまっていたもの。
それは、最早顔も思い出せない、父親への憧憬。
そんなある日、ふと父が鬼瓦職人だったことを思い出します。
さらに、この大阪の町に数ある立派なお屋敷の内、何軒かの屋根に、父が手がけた鬼瓦が現存することも突き止めました。
いてもたってもいられなくなった平四郎は、火消しへと転身。
やがて、目星をつけたお屋敷の内一軒、ある大商人の住居近くで火事が起きました。
平四郎にとっては、待ちに待った絶好の機会でした。
このご時世、他所様の屋根に遠慮なく登れるのは火消しか大工か泥棒くらい。
消火活動の最中、平四郎は姿を消しました。
屋敷の鬼瓦一つとともに。
それから一月後。
その大商人の屋敷に、風呂敷包みを抱えた平四郎がひょっこりと顔を出しました。
家主の前で風呂敷を開き、中身の鬼瓦を差し出すと、深々と頭を下げた平四郎。
火事に乗じて鬼瓦を盗んだのは自分であること、幼くして父と死別したこと、鬼瓦は父の遺作であること……自身の身の上を、ぽつぽつと、しかし正直に語りました。
明かし終えた平四郎は、おもむろに家主の前で諸肌を脱ぎ、その背中を見せました。
驚きのあまり絶句する大商人へと、
(´ム` )「……これでもう、あっしは死ぬまで親父とともにあることができやす」
そう。
鬼瓦を返却すれば、二度と父の面影に触れることはできなくなる。
ゆえに平四郎は、この凄烈な表情の鬼瓦を元に、自らの背中一面に鬼顔の刺青を彫ったのです。
(´ム` )「……罪は承知の上で、あの機を逃せば、もう二度と間近に見て触れることはできぬと思い詰めてのこと。これで悔いはありやせん。どうぞ、あっしを煮るなり焼くなり、ご自由になさってくだせえ」
この人情話に、家主である大商人はいたく感激し、平四郎の罪を赦しました。
そればかりか、実直で誠実な彼を見込んで、一軒の髪結い床を与えたのです。
(゚┏ω┓゚ )「この鬼瓦の平四郎、略して鬼平の逸話を基に著されたのが、かの池波正太郎の名作・鬼平犯科帳じゃ」
(; ̄Д ̄)「いや違うから! ってか師匠無理矢理出番作ってない!?」
そんなこんなで。
三年ほどたったある日。
着実に観相修行を進める南北くんに、また新たな決意が湧き上がることになりました。
その決意とは……続きの講釈で。
次回・ナンボククエスト第九話、
「富士とか日の出とか、(銭湯の壁に)最初に描き出したのは誰なのかしら?」
をお楽しみに。嘘です。←前回これやるの忘れてた
敦 URL 2011年03月17日(Thu)12時58分 編集・削除
物語の面白さに引き込まれながらも 私が反応しましたのは 鬼平犯科帳。
ある日の事連れ合いと鬼平を見ておりましたら その時の鬼平がまたええ感じだったので私、連れ合いに言いました。
私 「おとうさん 鬼平みたいになってぇやぁ~。」
彼 「ほんなら おかあさんが ひさえ(鬼平の嫁)
みたいに なってくれて あと鬼平の部下を
用意してくれたらなってもええで~。」
あかん ひさえは無理 ということで 負けました。
今日はこの辺で失礼します。