常に曖昧に。
えっと長らく更新が開いちゃってすみません。無事生存してます。
ちと内的な意味で大きな変化、あるいは示唆がありまして、実はまだ現在進行形でそのウェーブとやりあっとります。
正直かなり混乱気味ではあるんですが、それなりに落ち着いてもきたのでお待たせしすぎな南北くんの続きやります。日本語あやしいなおい。
では、どうぞ。
~~~
前回の続き。
髪結い床で得たのは、顔や毛に関する観相。
風呂場で得たのは、体格や様々な体の部位について。
それらは全て、身体の表面に位置するものばかり。
しかし、人体とは。
相を持つ人体というものは、表面だけではないはずだ。
人体の内側にある相を見定めるべく、いよいよ南北くんは、
焼き場人足――つまり火葬場での労働に就く決心をしました。
天明六年(1786年)。
水野南北、三十歳。
三年勤めた松の湯に暇を出したその足で、
摂津西成郡難波村(現在の大阪市浪速区)の千日墓所という所へ向かいました。
この焼き場人足という職、あるいはそれを統括する胴元の人々は、いわゆる葬儀屋の役割も兼ねていました。
現代でも不況知らずなどと呼ばれもする業界ですが、この時代のそれは利権も相当のもの。
元締めクラスともなると小大名すら凌ぐ豪奢な生活を送れるほどだったとか。
だから、下っ端人足であってもおいそれと雇ってもらえるわけではないのが常。
……なのですが、そこは南北くん。
サロン・ド・鬼や松の湯、そして観相の腕で培ったVIP人脈を駆使して、とらば~ゆに難なく成功しちゃいます。
(  ̄д ̄)「ほんっと、持つべきものは、人脈だね。ありがたやありがたや」
さて。
この千日墓所には、その名のとおり墓地としてのほか、二つの顔がありました。
一つは、焼き場、火葬場として。
もう一つは……処刑場として。
つまり、ここに集う「ホトケさん」は、安らかな最期を迎えた人ばかりではありません。
血なまぐさい人生の末に壮絶な最期を遂げた人。
騙し騙され世を恨んで逝った人。
大罪によって処刑された人。
また、社会的な法を犯したわけではないが、無惨な事件や事故に巻き込まれた人も。
そのような、いわゆる「不遇」な人々の「死の表情」を無数に目の当たりにしていきます。
それは一切の例外なく、「相を止めた人々」あるいは「~だったもの」の姿。
更に葬儀では参列者の間を駆け回り、死者の来歴を巧みに聞き出し、遺体の持つ情報との比較照合を怠りません。
そうやって、焼き場人足としての働きの中、南北くんは浮世の巷では得難い貴重なデータを着実に集めていきました。
そんな、ある日の事。
(  ̄д ̄)「……ん? あいつはまさか……」
一仕事終えて墓所内の住家へと歩いていた南北くんの前方から、二人の男が歩いてきました。
しかもその内の一人、チンピラ風体の人物に、何となく見覚えがありました。
(  ̄д ̄)「もしかして権(ごん)か?」
(`д´メ)「!? ワシの名ぁ知っとるおんどれぁ、何もんじゃ!」
(  ̄д ̄)「待て待て、匕首抜こうとすんな。俺だよ俺、鍵屋の熊太」
(`д´メ)「……ああっ! 熊太の兄貴で! 生きとったんで!?」
(  ̄д ̄)「おうよ、そう簡単にくたばってたまるか」
この権という男。
かつて鍵屋熊太としてチンピラ稼業に携わっていた頃の、いわゆる舎弟でした。
その立居振舞いから察するに、どうやら今も極道の世界にどっぷり浸かっている様子。
(  ̄д ̄)「ところで権よ、隣の侍さんは?」
(`д´メ)「いやなに、いわゆる用心棒でさあ。といっても腕も威勢もからっきしなんすけどね、ご覧の通りガタイだけはいいんで。連れてるだけで番犬代わり程度にはなるってぇもんで」
(=_=`)「……(ぺこり)」
そう言われ、静かに会釈した隣の浪人を改めて観察した南北くん。
確かに、体格は立派ですが、眼光に任侠者特有の狂犬めいた鋭さがありません。
むしろ雇い主からの侮言にも気を損ねない、温和で実直な気性が窺えるほど。
人間としては好感が持てそうですが、しかしなるほど、用心棒としては張子の虎のようです。
そんな観相モードのまま、視線を侍から権へと戻した南北くんでしたが、
その時、昔馴染みの顔面に、ある『相』を発見してしまいました。
海常師匠と初めて出会ったとき、彼の顔にあったのと全く同じ――剣難の大凶相を。
(  ̄д ̄)「……権、気をつけろよ」
(`д´メ)「……はぁ? 何でぇいきなり」
(  ̄д ̄)「お前に剣難の死相が出てる」
(`д´メ)「んだとワレェ! 何縁起でもねえことぬかしよんねん! 昔のよしみで下手に出てりゃつけ上がりやがって!」
(  ̄д ̄)「よしみってのはこっちの台詞だよ。しばらくは大人しくしとくのを勧める。でないと本当に死ぬぞ」
(`д´メ)「ケッ! 薄汚ねぇ坊主の戯言に付き合ってられるかってんでぇ! 胸クソ悪ぃ、さっさと帰ぇるぞ八助!」
(=_=`)「……(こくり)」
八助と呼ばれた武士は、やはり物静かな物腰で軽く頷くと、憤懣やるかたない権の後について立ち去っていきました。
目を細め、その二つの背を見送りながら南北くんは呟きました。
(  ̄д ̄)「……昔の俺と同じ、愚か者だな」
……。
数日後。
墓所内を歩いていた南北くんの前方からやってきたのは、体格のいい一人の浪人。
大人一人は充分入るサイズの桶樽を背負った男は、すれ違い間際に南北くんの顔を見るなり驚いた様子で、
(=_=`)「……あ、あなたさまは……!?」
(  ̄д ̄)「ん? あんた、確かこないだ権が連れてた……それにそのバカでかい樽は何だ?」
(=_=`)「……紀州浪人、大藪八助と申す。実は……先日のあなた様の予言が……当たりまして……」
(; ̄д ̄)「予言っつーか観相なんだけど、まさかその樽……」
八助の話によると、つい昨夜のこと。
極道稼業で恨みを買っていた相手に待ち伏せされた権は、急所を一突き。
あっさりと帰らぬ人になってしまったとのことでした。
チンピラの世界は薄情なもの。南北くんもそれは身にしみて知っています。
権の舎弟達も、兄貴分の死に情けも見せず蜘蛛の子を散らすように去った中、しかし八助だけが桶樽を背負ってここまで遺体を運んできたのでした。
この浪人の心根に切なくも温かいものを感じながら、南北くんは早速、八助を案内して、権を墓所内に葬ってやることにしました。
桶から出して湯灌をし、死に装束を着せながら観察したかつての舎弟からは、
完全に動きを止めた権の顔から、あの凶相は……やはり消え失せていました。
そうして弔いを終えた南北くんの前で突然、八助は地に両手を突いて深々と頭を下げると、
(=_=`)「……あの、先生」
(  ̄д ̄)「は? 先生?」
(=_=`)「……はい。先生、その観相の腕前、そして心意気にこの大藪八助、いたく感服つかまつりました。こうして二度も巡りあわせて頂いたのも何かの縁……どうか、拙者をぜひとも先生の弟子にしていただきたく」
(; ̄д ̄)「で、弟子っ!?」
これまで観相一筋、学究に邁進してきた南北くん、弟子を取るなど一度も考えたことはありませんでした。
驚きつつも、しかしこうまで言われて悪い気はしません。
何より、このお人よしで実直な浪人を、どこか気に入っていたのも確かでした。
(  ̄д ̄)「……よし、わかった。八助っつったよな。それじゃ今日からあんたはこの水野南北の弟子だ!」
(=_=`)「か、かたじけない! 粉骨砕身お仕えいたしまする!」
(; ̄д ̄)「いや奉公じゃねーんだから!」
♪てーれれーれーれれれー
《八助 が なかまにくわわった!》
Σ(; ̄д ̄)「だから何だこのテロップとファンファーレ!?」
こうして初めての門人、八助を迎えた南北くん。
ついにパーティープレイ、もとい、ここから南北くんの大躍進が始まるのですが、それは続きの講釈にて。
次回ナンボククエスト第十二話、
「私は一人密かに今更ツチノコを探してみる。無論いない。あ、いた! いたよ!」
をお楽しみに。嘘です……けれどそんな歌なら実在します。